カラーン‥‥カラーン‥‥‥‥
エリス「くすくす‥‥」
浩樹「なんだよ、なにがおかしい?」
エリス「ううん、時が経つのは早いな~って思って」
エリス「撫子を辞めてパリに来たって、いきなり私のアパートを訪ねてきたのが昨日のことのように感じられるんだもん」
浩樹「もうあれから8年も経つのか‥‥だけど、オレも昨日の出来事のように感じるな」
浩樹「今でも目を閉じれば、あの時のお前の驚いた顔が鮮明に浮かび上がる。狐につままれた顔っていうのは、ああいうのを指すんだろうな」
エリス「そりゃ誰だって驚くよ‥‥連絡も何も無しで突然来るんだもん」
エリス「前の日に電話したら、現在使われておりませんとか言われるから、おかしいな~とは思ったけど‥‥」
エリス「っていうか、物凄く心配したんだよ?もしかして、厄介ごとに巻き込まれたりしてるんじゃないかって‥‥」
エリス「それで仕方がなく霧さんに電話してみたら、明日になればわかるからって‥‥余計わけわからなくて‥‥」
エリス「色んな想像が頭の中をグルグル巡って‥‥もぉ~、みんな人が悪いよ」
浩樹「お前をビックリさせたかったからな」
エリス「もぉ~‥‥」
エリス「だけどあの時ね、ビックリもしたけど物凄く嬉しかったんだよ、お兄ちゃんが来てくれたって‥‥」
エリス「もしかして、寂しくて私を追いかけてきてくれたんじゃないかって一瞬期待しちゃったんだから」
浩樹「まあ、それもないことはないが‥‥」
エリス「でも、こっちに来た理由なんてもうどうでもいいよ‥‥今、私の隣にはお兄ちゃんがいる‥‥それだけで十分」
エリス「しかも、今ではパリで知らない者はいないってくらい有名な画家になってね」
浩樹「バカ、お前なんて世界を代表する超新星とか騒がれてるだろ」
エリス「だけど、夢みたい‥‥お兄ちゃんは画家として成功を収め、そして今では私の旦那様だなんて‥‥」
エリス「ずっと、お兄ちゃんとこうなれたらいいのにって夢見てたけど、まさか実現するなんて‥‥」
浩樹「夢は諦めなきゃ叶うだろ?」
エリス「うん‥‥お兄ちゃん、愛してるよ。これからも、ずーっとずっと一緒だからね?」
浩樹「ああ、もちろんだ‥‥」
オレ達は春の暖かな風の元、周囲の祝福を受けヴァージンロードを並んで歩いていく。
これからの人生を共に歩んでいくパートナーとして‥‥
今のオレの夢は、隣で微笑むエリスの顔から、いつまでもその笑みを絶やさないことだ‥‥
だから、オレは生涯をかけてその夢を実現させよう‥‥幸せな人生だったとエリスが思えるように‥‥
カラーン‥‥カラーン‥‥‥‥
