——「doc」はすごく情景が見える曲ですね。ねじを回す音から始まって。
涼木「docはドクターの略称で。冒頭から博士って言葉が何回でてくるんだってぐらいなんですけど(笑)。普段から僕は、絵本とか物語とか短編小説とか、完結してくれるような話が好きなんです。この歌詞はメロディ関係なくガーッと書きなぐって添削して。仕上がってみたら、これはたぶんアコースティックなちょっと暖かい音が必要なんだろうなって思って、沢村にお願いしたんです」
沢村「お願いされる前から、この曲いいねって言ってて」
涼木「そうだった(笑)。お願いする前から、沢村がアコギを買ってきたんです。曲出しの時からすごいうるさかったんですよ。まだ収録曲として決まってないのに、『さとちゃん、俺、絶対「doc」やるから。もうギター買ってきたから』って(笑)」
——熱いですね(笑)。沢村さんはこの曲のどういうところに惹かれたんですか?
沢村「世界観が好きなんですよ。歌詞とメロディラインと。デモを聴いていたら、アコースティックギターが一番しっくりくる曲だなと思って。実は僕の人生の中で、レコーディングでアコーステックギターを使ったのは今回が初めてだったんです。この曲で初めて弾ければなおさらいいなと思って買いに行って。無機質な感じの中に優しさとか暖かさがあるような、そういうイメージで弾いてます」
涼木「ベースもドラムもかなり歌に寄り添ってくれてね」
沢村「みんなきっと、この曲の主人公のロボットが乗り移ったんだと思うんですよね」
——感情移入しやすい曲ですもんね。
沢村「はい。ロボットの気持ちを音で出してたんだと思います」
涼木「どういうこと?(笑) ロボットなんて一度も歌詞に出してないしね」
沢村「いや、僕はロボットだと思ってるよ。2200年ぐらいの未来のお話かなって」
——あ、そんな未来にいっちゃいますか? ねじ式のようですが。
多村「ねじ回すってかなりアナログだけどね(笑)」
沢村「200年後もねじは回してるんじゃないですか」
多村「そこを引っ張るんだ(笑)。まあ、いろんな人の捉え方があるよね」
涼木「そうだね。歌詞に関してはあんまり言い切りが好きじゃなくて、想像させたいんですよね。聴く人の個性とか楽しみみたいなものを残してあげたいんです。今リハーサルでもよく演奏してるんですけど、CDで聴く暖かさみたいなものとはまた違う、熱みたいなものが生の演奏では出てくるんです。聴き比べしても面白いんじゃないかなと思います」
Bikkey「バラードって今までも何曲かYetiにもあるんですけど、聴いてる人の呼吸を考えてベースのグルーヴをつけるんです。ちょっと苦しくさせたい時は休符を使ったり。そうやって聴いてる人をもっと引き込むことができるようなベースを目指しています。この曲は特に何回も練って作りましたね。シンプルな曲ほど、そういう部分が一番難しい」
——では「tear drop」。この曲もストレートな曲ですね。
涼木「そうですね。この曲はこの中で一番早く制作した曲です。メッセージ的にはシンプルな言葉を選んで、特に深読みなんかは必要ないような歌詞かなと。“tear drop”っていうしっとりとした雨粒のようなものと、ギターを演奏する時に使うピックの中でも、“ティアドロップ”っていう涙型のピックがあって、その2つが自分の中でリンクしたんです。バンドっていうものと、涙の粒みたいなものがすごくぴったりときたタイミングが僕の中にあって、今この感情を曲に起こすしかないと思った。痛みを乗り越える結束力だったり、バンドの一体感だったり、そういうものを一番気楽に言葉を選ばず書いている歌詞だったりするし、サウンド面においても計算高くないもんね」
沢村「うん。すごくストレート」
涼木「曲もスパッと終わるので、あっけらかんと涙を振り切るような勢いがあって、アルバムの
一番最後にふさわしいかなと。この曲はバンドサウンドだから、アレンジ面というよりはノリが大事だったよね。うちのバンド、ベースとドラムが一緒にスタジオに入ってレコーディングするんですよ。向き合ってね、絵的にすごくいや〜な感じでね(笑)」
Bikkey「どういうこと?」
涼木「仲良しだなあ、この人たち、ってこと(笑)」
Bikkey「向き合って一緒に音出してカッコよく録れたものに、他のパートを乗っけた方が絶対にカッコいいと思うんで」
多村「細かいことはしないでね」
涼木「結構ストイックなんですよ。こっちはもう、『かっこいいね、それでいこう』ってなってるのに、二人が向き合って『まだいけるっしょ、もう一回いこう』って。だんだん違いが分からないような次元で話し合ってるからね(笑)。ギターはリードパターンをいっぱい出してくれて」
沢村「そう、シンプルであるがゆえに、どういう音が心地よいのか、突き刺さるのかってことをすごく考えましたね。この曲は去年の秋ぐらいか、結構早い段階からライブでやってた曲なんですけど、その時に弾いてたリードと、ここで弾いているリードとは全然違うんですよ」
涼木「歌詞も全然違うしね。最後のサビの前に『涙の意味はあるの?』って自問自答している歌詞があるんですけど、レコーディングの時に『あるよ』って言葉を付け足したんです。僕の中で『ある』っていうことを言い切れたので。去年の秋にレコーディングしてたら、こういうポジティブなメッセージは入ってこなかったと思う。そんなふうに変化した2015年は僕らにとってすごく苦悩の年だったんです。でも、2016年は修行の一年だと僕は思っているので、『意味はあるよ』って言い切って、アルバムの完結に向かいたかった。僕らの中でも語ればきりがないですけど、順を追って聴くと感情が落ち着いたり揺らいだり、すごくYetiを楽しめる全6曲になっているんで、ぜひ曲の順番通りに聴いてほしいです。全曲余すことなく堪能してほしいなって思います」
——では最後に、ツアーへの意気込みを教えてください。
多村「今回、5大都市をワンマンツアーで回ることになって、リリース直後からあるインストアイベントも含めて、新しい挑戦ができる、変化できる1ヵ月になるのかなって思います。とにかくこの鬼スケジュールを頑張ります(笑)」
Bikkey「新生Yetiになってからまだ日が浅いんですけど、今年一年をかけて大きく変わっていくと思います。新しいCDという武器を持って、このワンマンツアーをYetiとしてどう向き合うのか、どこに光をあてるのか、そういうことがどんどん見えてくるようなツアーにしたいですね。音楽をやっている以上、唯一無二の存在になりたいので、いろんなものを探るワンマンツアーにしていきたいです」
沢村「Yetiの歴史からしたら、僕が加入してからの時間はすごく浅いんですけど、それでもこの4人で見せられる結束力っていうのはすごく大きいものだと思うので、そこをしっかり見せながら、結束力もさらに強くなってファイナルを迎えたいなと。あと、やっぱり各地で美味しいものを食べたいと思います(笑)」
涼木「ボーカリストたるもの、メンバーを引っ張って、ファンを引っ張って、シーンを引っ張っていくべきパートだと思っているので、CDも自信作を作って当たり前だと思っています。ライブもその時のフルパワーを表現しないとダメだと思います。そのうえでYetiとしてこれからシーンに勝負をかけていきたいと思っています。僕らが今作で放った6つの光をこれからみんなの元に届けて、育てていき、もっともっと大きな光にすること。それが眩しい未来へ繋がっていくんだと僕たちは思っています」